〈インタビュー〉本をつくってみて、どうでしたか? 大歳倫弘さんに聞きました
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2025年11月に発刊したエッセイ『ある日、西の方角が吉と出たので』。
沖縄へ行けば、仲間達の壮絶な猫とり合戦に巻き込まれ、ドイツの演劇祭に行けば、夜の闇に放り出される著者。どこへいっても余所者扱いされる日々から抜け出そうと向かった果てに、見つけたものとはーー?
著者の大歳倫弘さんは、ふだん舞台やドラマの脚本執筆や演出を主にされていて、単著ははじめて。
ふらりと奈良に立ち寄ってくれた大歳さんに、本を書いてみて、どうでしたか?と、話を聞きました。
(2026.1.15収録 聞き手・構成・写真:ループ舎)
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―― 一冊本を書くのは初めてのことですよね。作ってみて、どうでしたか?
大歳 楽しかった、というのも勿論あるんですが、言い方が悪いかもしれないですけど、息抜きみたいな気持ちで書けた面も大きかったです。自由に書けた。自由に、実際にあったことを積み上げて書くというのが、脚本などの仕事ではあまりできることではないので。
今回書いたエッセイは、思いや記憶にあることを起こしていく作業だったので、作る苦悩みたいなものはあまりなくて。書いていて新鮮で、楽しさがすごくあったんですよね。僕、なかなかに記憶力がいいみたいなんですよ。ふだんも、みんなは覚えていなくて僕だけ覚えている、調べてみると僕の記憶通りだった、ということがよくある。それが活きてるなぁと思いました(笑)。
―― 日常的に、起こったことをメモしたりしていますか?
大歳 仕事というか、やっていることに関わることはメモしておこうと意識してはいます。でも今回の本にはそのメモはまったく関係なくて。本の中に沖縄の話が入っているけれど、当時沖縄に行っているときは全然メモなんてしていなくって、それこそ記憶から呼び起こして書いてますね。
―― ふだんは劇やドラマの脚本を書いたり、話を創作することをメインにお仕事されていると思います。今回は・・・創作とエッセイの境目が曖昧な本ではあるんですが(笑)、自分のことを書く、ということに関してはどうでしたか?
大歳 なにかを見たり読んでいるときに、「こういう面白いことがあったんですよ。面白いでしょう!」という感じがしてしまうと若干醒めるというか、「うっ」となるので、そうならないようにというのは思っていました。自分の書いているものは、あくまでも娯楽なんで。そこは普段から無意識に気をつけているんじゃないかな、と思います。
でも最近、「自分の話をもうちょっとしていいんですよ」と言われたりもして。塩梅が難しい(笑)。

(写真:コーヒーの焙煎機を知った顔でみていた大歳さん。焙煎についてはまったくわからないそうです)
―― たしかに、一番はじめに原稿をいただいたとき、大歳さんからみえる景色や人、出来事がメインに綴られていて、そのときに自分がどう思ったとかどういう考えだったかとか、それほどもともと書かれていなかったんですよね。
大歳 それこそさっき言った、気をつけていることが裏目に出ているのかもしれないです。自分自分しないように気をつけているから、抑えるようになっちゃっているんでしょうね。「大歳さんの話を聞きたいのに、うまいこと別の話題にすりかえているときがありますよ」と言われて、でもそんなん自分は意識してないから「そうなんや」と驚いて。
そこはすこし、最近変えようと意識的に思っているところです。本をきっかけにトークイベントとかをさせてもらうと、自分の話を聞きにきてくれているお客さんがいるから、自分のことをしゃべったほうがいいんだろうと思って、シフトしようとしている最中。
僕はずっと劇団にいたので、劇団での活動、イベントは協力プレーみたいなところがあるんですよ。「こういう企画をやりましょう」となると、じゃぁその企画が一番よくみえるように、みんなで協力プレーでやる。そういう意識が強かったんです。舞台とおなじで、連携プレー、パスをしていく。自分でドリブルで突っ込んでいくというようなことはしないでやってきたので、個人での書きものとなると、また違うんだなと実感しています。自分しかいないから、自分でドリブルして進んでいかなといけない。だから今はドリブルの練習をしている感じですね。
―― ドリブルを練習した大歳さんがどうなるのか、楽しみですね。
大歳 いや、どうなるかはわからないですよ。ドリブルができるようになろうと意識づけをしているだけで、できるようになるかもわからない(笑)。人の本性ってすぐには変わらんじゃないですか。
―― いっぱい書いたら、ドリブルの技が増えていくかもしれないですよ。大歳さんの書くもの、もっと読みたいです。
大歳 書く量は増やしたいなと思ってます。どうにかして。
本ができてから、自分の知らないところで本が自分の宣伝をしてくれている感じがするんですよね。このあいだも、初めてお会いした方が本を読んでくださっていて。自分の知らないところでなにか動いていて、それが本の魅力ですよね。出したばかりですけど、すでになんとなく体感しています。
これはある劇作家さんが言っていたことなんですけど、「自分で可能性を広げられる状態が一番幸福だ」と。僕の言葉じゃないんですけど(笑)、心に残っていることです。
(終)
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大歳倫弘(おおとし・ともひろ)
1985年兵庫県生まれ。劇作家・演出家・構成作家。2005年、ヨーロッパ企画に参加。以後 、作家として、ラジオの構成やドラマ・映画の脚本を数多く手がける。また、舞台の脚本・演出も行っており、2009年から「ヨーロッパ企画イエティ」名義でプロデュース公演を定期的に上演している。
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イベントのお知らせ📢
2/1(日)19:00〜@下北沢・本屋B&B
大歳倫弘×松居大悟
「思い出の旅路カードバトル」
『ある日、西の方角が吉と出たので』(ループ舎)刊行記念 開催!