靴にまつわる短歌と小さなエッセイをご紹介する、「靴のうた」。
ドラマはいつもすぐそこに。どうぞご覧ください。
信じない 靴をそろえて待つことも靴を乱して踏み込むことも
東直子『春原さんのリコーダー』
母がテレビを見ています。デイサービスに行かない日は、一日中、テレビが相棒です。でも、デイサービスに行くと友だちがいっぱいいて、みんなで縫い物をしながらおしゃべりして疲れて帰ってくるので、母にとっては、好きなテレビを好きなだけ見る「自分だけの日」も必要なのです。
夜、ドラマを見ていた母が、急に言いました。
「聡、事件が起きると、必ず靴が出てくるね」
すぐに本から目を上げると、テレビには、脱ぎ散らかされた靴でいっぱいの玄関が映っていました。そのあとに、人々が何やら叫びながら家の中に押し入るシーンが続きました。確かに、そうだ! これは大事件に違いない!
何かが起こり、人々が大急ぎで外へ出て行くときにも、慌てて靴を履くシーンが映されるでしょう。
事件の前後に靴あり。靴はドラマを連れてきます。
選歌・エッセイ 千葉 聡
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