特集
靴のうた | 2019.02.06

靴のうた -第10回- 靴はドラマチック 


靴にまつわる短歌と小さなエッセイをご紹介する、「靴のうた」。
ドラマはいつもすぐそこに。どうぞご覧ください。
 
 

信じない 靴をそろえて待つことも靴を乱して踏み込むことも

東直子『春原さんのリコーダー』

 

 母がテレビを見ています。デイサービスに行かない日は、一日中、テレビが相棒です。でも、デイサービスに行くと友だちがいっぱいいて、みんなで縫い物をしながらおしゃべりして疲れて帰ってくるので、母にとっては、好きなテレビを好きなだけ見る「自分だけの日」も必要なのです。
 夜、ドラマを見ていた母が、急に言いました。
「聡、事件が起きると、必ず靴が出てくるね」
 すぐに本から目を上げると、テレビには、脱ぎ散らかされた靴でいっぱいの玄関が映っていました。そのあとに、人々が何やら叫びながら家の中に押し入るシーンが続きました。確かに、そうだ! これは大事件に違いない!
 何かが起こり、人々が大急ぎで外へ出て行くときにも、慌てて靴を履くシーンが映されるでしょう。
 事件の前後に靴あり。靴はドラマを連れてきます。

 
選歌・エッセイ 千葉 聡

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