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靴のうた | 2019.07.04

靴のうた -第16回- 地震のあとで


靴にまつわる短歌と小さなエッセイをご紹介する、「靴のうた」。
あの日のことをおぼえていますか。どうぞ、ご覧ください。
 
 


履き慣れぬ革靴の音響かせて歩く四時間ゲーム盤のごと

黒岩剛仁『野球小僧』

 

 出張のために新しい靴を用意したのでしょうか。「履き慣れぬ革靴」は、新しく、輝いているようです。
 でも、歌集をじっくり読むと、この歌は地震の直後の様子を詠んだものらしいのです。誰もがあこがれる大企業でキャリアを積んできた歌人は、会社の巨大なビルが揺れる姿を詠み、そのあとにこの歌を置いています。
 急いで社に戻り、同僚たちが無事か、建物に破損がないか、あちこちを見て回ったのでしょう。
 不安なときも、人は靴とともに過ごします。履き慣れぬ靴は、大変な思いをした四時間で、頼もしい相棒になっていったことでしょう。
 みなさん、夜、寝るときには、必ず近くに履き慣れた靴を置いておいてください。古い靴でかまいません。地震や火事など、急いで避難すべきときに、すぐに靴が履けるように。
 靴さえあれば、たいていの災害から逃げることができるのですから。

 
選歌・エッセイ 千葉 聡

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