特集
靴のうた | 2019.05.29

靴のうた -第15回- 大きな靴にあこがれて


靴にまつわる短歌と小さなエッセイをご紹介する、「靴のうた」。
靴にも気配があります。どうぞ、ご覧ください。
 
 


忘れ物とりに戻った玄関のおぼえていたい靴の大きさ

本田瑞穂『すばらしい日々』

 

 大学生だったころ、同じ学科の女子に言われました。
「手がゴツゴツしている人がカッコいいんだよね」
 彼女によると「今まで好きになった男性は、みな手の甲に血管が浮き出ていて、力がみなぎっているように見えた」とのこと。
「それにしても、ちばさとの手は、血管が全然見えなくて、ふっくらしていて、まるで子どもの手だね」
 彼女が大笑いしたカフェの、居心地の良かった隅の席を、今でも覚えています。
 そう、たしか彼女は「男だったら大きな靴を履いてほしい」とも言っていました。玄関に大きな靴が置いてあると、それだけで気分が華やぐんだそうです。
 残念ながらちばさとの手は血管が浮き上がらず、足も小さなまま、わりと小さな大人になりました。
 誰かのカッコいい手や、大きな靴を見るたび、彼女のことを思い出します。

 
選歌・エッセイ 千葉 聡

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