靴にまつわる短歌と小さなエッセイをご紹介する、「靴のうた」。
靴にも気配があります。どうぞ、ご覧ください。
忘れ物とりに戻った玄関のおぼえていたい靴の大きさ
本田瑞穂『すばらしい日々』
大学生だったころ、同じ学科の女子に言われました。
「手がゴツゴツしている人がカッコいいんだよね」
彼女によると「今まで好きになった男性は、みな手の甲に血管が浮き出ていて、力がみなぎっているように見えた」とのこと。
「それにしても、ちばさとの手は、血管が全然見えなくて、ふっくらしていて、まるで子どもの手だね」
彼女が大笑いしたカフェの、居心地の良かった隅の席を、今でも覚えています。
そう、たしか彼女は「男だったら大きな靴を履いてほしい」とも言っていました。玄関に大きな靴が置いてあると、それだけで気分が華やぐんだそうです。
残念ながらちばさとの手は血管が浮き上がらず、足も小さなまま、わりと小さな大人になりました。
誰かのカッコいい手や、大きな靴を見るたび、彼女のことを思い出します。
選歌・エッセイ 千葉 聡
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